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zoom RSS お母さんの巻き寿司(まきずし)                                 

<<   作成日時 : 2005/12/13 11:31   >>

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[お母さんの巻き寿司」の短編は「雲の夢想録」という創作集に収録されている物語です。45年前の中国山脈の懐にある農家の田んぼで働く父母を思い出しながら執筆したもので、大空を流れゆく雲が下界のさまざまな様子を眺めながら日記形式で語っていくものです。これまで30篇の物語が完成、

日本語版は蝸牛社から8篇、英語版はオックスフォード大学出版局から12篇が英文で、アジア各国では、パキスタン、ミャンマー、韓国、スリランカなどで翻訳出版され各国の子どもたちや大人たちに読まれています。
http://tajimashinji.at.webry.info/201002/article_4.html



お母さんの巻寿司

   「いつの時代でも、どこの国でも、お母さんという存在はありがたいですね。」とある日、大空に浮かんでいる白い雲が静かな声で言いました。雲はさらに話しを続けて、
   「わたしは、ずっとずっと遠い昔から、いろいろな国でいろいろのお母さんを眺めてきました。どこの国でもお母さんたちの表情はみな同じ、みんな心配顔をしています。そしてみんなものすごい働きものなのです。子どもを育てるために、それはそれは朝から晩まで働き通し・・・・朝日の昇らない前から一番星が輝き始めてもまだ働いているお母さん、田んぼから帰ると、食事の準備をしながら子どもたちの着るものや、学校へいく支度(したく)や、宿題の内容まできちんと見ながら心配顔と笑い顔を交錯させ子どもたちの幸せを祈っているお母さん。」と雲は言いました。
   「・・・・私はあるとき、日本は中国山脈のやまふところに位置する三次(みよし)という盆地の大空の上に浮かんでいました。そこはどこもかしこも広い田んぼで、黄金色の稲穂が秋風に吹かれて静かに揺れていました。見渡す限りの田んぼで今、稲刈りの真っ最中。ある田んぼで、日焼けしたお母さんが、深くかがみこんで鎌を手にして一生懸命に一株一株稲を刈っていました。お父さんも一生懸命。でもお母さんは、稲を一束刈るごとに、なにか深刻そうな顔をしてぶつぶつとつぶやいているのです。
   「どうして?」 雲は不思議に思って静かに田んぼへと舞い降りていきました。
   「ああ、そうか。わかった!あのつぶやきは・・・・・半年前の田植えのときも全く同じ。あの時もお母さんはなにかぶつぶつつぶやきながら、1本1本稲の苗を植えていました。
   「・・・ああ!うちの次男ときたら今、遠い遠い国に行っているという。なんでもインドという国だそうだ。哲学の勉強のためだとかいって出かけたらしいが、いまごろ異国の地でどうしているのか、・・・なんでまたあんなに遠い国に行ったんじゃろ。難しいことを勉強して、頭でもおかしくならねばいいが・・・ともかく早く無事に帰ってきていい就職でもすればいいのじゃが・・」 
お母さんはそう言った後、さらに続けて、
   「三男は今、大学受験で忙しいが、来年の春はいったいどうなっていることじゃろ。遊び呆けては駄目じゃといつも言っていたのに・・・・しっかり勉強して早く学校に入って、わしらを安心させてくれればいいが・・それにしても次々と息子たちを大学にやると金がかかって大変じゃ。お父さんは、どうやって高い授業料を払うつもりじゃろ。」と心配顔のお母さんでした。そしてさらに続けて、
 「・・・・長男に、早くいい嫁が早くみつかってくれればいいが・・・いい嫁が来てくれたら、本当にわしらもひと安心じゃが、果たしてうちのような百姓の生活になじむじゃろうか?この頃の若い者ときたら・・・・・」
   次から次へとお母さんの心配の種はつきません。そうして忙しく働いているうちにやがて昼時になりました。するとお母さんは、大きな声で。
  「お父さん!」と呼びました。
  「お昼にしようや!」
それからお母さんは風呂敷に包んで持ってきた巻き寿司を取り出し、土手の草むらに腰を下ろしました。「ああ、おいしそう!それを眺めていた雲の私だってお腹がすいてしまったぐらいです。
「この巻き寿司はうまいのう!」と汗一杯のお父さんが言いました。
「・・・わしは巻き寿司を食べていればこんなに幸せなことはない!」とお父さんは大きく口に巻き寿司を口にほおばりながら言いました。
「お父さんは巻き寿司が好きじゃけえのう!うちのものはみんな巻き寿司が大好き。」とお母さんが答えました。するとお父さんが、
「それにしても時間がたつのは早いのう!子どもたちはあっという間に大きくなってしまって。みんな元気に育って頑張ってくれればいいが、それにしてもみんなみんな家を出ていって少し寂しいのう!」とお父さんが言いました。
 「・・・・そう息子たちが小さかった頃は、小学校の運動会や学芸会にも、みんなででかけて楽しかったね。」とお母さんが笑い顔で言いました。
「運動会のときは・・・いつもきまって巻き寿司じゃった。子どもたちはみんな巻き寿司が大好き、歓声をあげてね。ご飯の中に竹の子やタマゴやいろいろすしの具を入れ、海草で巻いて包丁で食べやすい大きさに切っているとき、そうそう、いつも一番端(はし)のところが残ってしまう。それを傍で待っていて、巻き寿司のはしを食べるのを次男はいつも楽しみしておった。じゃが今はいったいどこでなにをしていることやら・・・・」とお母さんが心配そうにお父さんに語りかけました。
「ほんまにのう・・・」とお父さんが答えました。
「母さんや、今はしばらく寂しいがのう。そのうち3人の息子たちが大学を卒業して職について、たくさんの孫を連れて帰ってくるからのう!元気を出して働かにゃあいけんで!とにかく息子たちにしっかり勉強をさせておけば、この人生では決して間違いは起きないんじゃ。わしらは貧乏な百姓じゃから、お金は思い切り人間を育てるために使った方がいい。そうじゃ!お母さん!人生では子どもたちの教育に投資するのが一番じゃけえ!」とお父さんが言いました。

「ほんまにのう。お父さんはいつもお金がなくても元気じゃあけえ。お父さん!うちの家計は今月は大変じゃよ。でもまあ、なんとかなるじゃろうね。お父さんががんばってじゃけえのう!お父さん、巻き寿司をしっかり食べんさいよ。子どもたちにしっかりしっかり送金してやらにゃあいけんけえ・・・お父さん!ようけい食べんさいよ!」

 お母さんが明るい笑顔でお父さんを励ましました。大空に浮かんでいる雲が言いました・
「ああ、素晴らしい景色だね。子どもたちを一生懸命に育てているお母さんやお父さんの表情・・それはいつの時代も、どんな世界でも共通だね。ありがたい。偉大だね!」
 大空の雲はそう言うと、秋日に照らされて輝いている中国山脈の三次盆地からゆっくりと流れて消えていったのでした。 

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思い出の父と母

2004年、3月24日と11月26日の命日

父茂幸 享年89歳、
母満江 享年83歳
にて逝く

故郷の天良山(てらやま)の大空に
浮かぶ満月の輝き、
水ぬるむ小川のせせらぎ、

今は昔、耳を澄ませば 
雪の夜には 蒸気機関車の汽笛
耳を澄ませば、
夕ぐれの塩町から 聞こえてくる歌謡曲
さらに耳を澄ませば、
朝草を刈りて、山から帰ってくる父と母
夏の朝は忙しかった。これらの草は
みんな堆肥となって田んぼに蒔かれた。

しかし今は、骨となり灰となって 
消え去ってしまった 父と母
その灰の中から、
父が大事に愛用したカーディーガンのボタンと
母の痛む足の関節を支えていた金属が
見つかった。それを手にとって
私は涙を流した。

ああ、いまはなにも残っていない。
だが永遠に 消えていかないもの
それは必死で働き、必死で生き、
必死で支えあったあおの当時の
家族の 人生の記憶

父は知恵と努力の人
母は感情と愛情の人

長男、哲二は農業教育を
次男、伸二は国際教育を
三男、隆司は学校教育を
生きた。

父母は ひとりひとりの
子どもたちに 
自転車に空気でも入れるかのように
「教育」という夢と希望を
私たちの人生に注入し、
大きく膨らましてくれた。

決して裕福ではない家計であったが
3人兄弟はみな幸せな
子ども時代を送り、その当時の村では珍しく
みんな大学を卒業できた。

時には 家中に 叱声や愚痴も響いたが
家中、絶えず活気と笑い声に満ちていた。

雪の降る前夜には 裏山の竹やぶの笹は 
強風で大きな音をたてた。
星降る夜空には 蛙の声が下山手に響き渡った。
そんな時代を生きていた 
田島家の私たち

88歳になった父は
北海道旅行のとき
若いときに広島で見た展覧会を語った。
それは中国の「魯迅」展、
その中で「愚公山を動かす」という
たとえ話を感動的に話した。
まるで己自身の生き方のように・・
そしてみんなで酒を飲み大いに歌った。

父の幸せな瞬間だった。
そして思い出す。
母がよく口にしていた言葉
「いつまでもあると思うな親と金」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その言葉は現在、身にしみる。

ああ、今一度父母は
若いときの姿で
元気に帰ってきてくれないだろうか!
あの時代が帰ってきてはくれないだろうか?

人生の青い風が一陣吹き抜けていったとき、
人生は音もなく過ぎ去っていったことを
感じる。

一期一会を感じながら
私たちを限りなく支えて下さっている
無数の皆さまに、心からの
感謝を表したい。

合掌! 












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