識字シリーズNO.10 現代と識字

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識字の問題は、それぞれの時代の文明のありかたをリアルに表現しており、現代のように多様で大量な情報の海を生きるためには、テレビや広告や宣伝などあらゆるメディアについての批判的能力の形成が子ども時代から非常に重要となっている。それは今日の多様なメディアに十分にアクセスできる能力と同時に、それを分析評価したり、あるいは多様な形態でコミュニケーションを創りだすことのできる能力を指しているもので、それはこれまでの社会がもっていた読み書きなど文字を中心に考えられてきた識字(リテラシー)の概念を超えて、映像やあらゆる形態の電子コミュニケーションを広く理解し、創造する力を含んだ新しい概念である。21世紀にはコンピューターによってますます多様で迅速なコミュニケーションが実現するだろうが、それが利益だけを追求して、市場経済だけの成功を求める単なる機能や効率を求める場合には、取り返しのつかない人間疎外や不信が生じてくるだろう。
 そして現代世界は識字(リテラシー)を狭義に理解し、文字文化を偏重するあまりに自然の視覚・聴覚・触覚・味覚・直感・運動などコミュニケーションの大いなる可能性を十分育ててはこなかったこと。特に、日本の子どもたちは、受験教育や学習指導要領などに代表される読み書き能力を中心とした学力偏重によって、豊かな感性による想像力やたくましい創造力を養う機会を奪われてきた。その結果人間的な感受性や表現能力が非常に乏しい結果となっている。コミュニケーションができていないのだ。自然や人間の基礎にある豊かな生き方を絶えず実感しながら、世界の人々とともに「本当の言葉や文字を求めて」人間的な自立や創造のための識字活動やコミュニケーション活動を行っていくことが求められている。
 アジアやアフリカの人々は叫んでいる。”人間的な人生を送られるように識字の力を与えて下さい!” 生存するためには知識を下さい!世界で最も重要な位置にある子どもと女性に平和や喜びと幸せをもたらすような識字を与えて下さい!と。それは今日の中東の子どもや大人たちに共通する叫びである。そして識字者である私たちの課題とは、情報化時代における普遍性と倫理に基づいた人間的な識字(ヒューマン・リテラシー)を確立し、これを世界の人々とともに実践していくことではないかと思う。つまり。本当の識字事業とは、人間性を豊かにし、世界を平和に作るものでなければならない。文字を学ぶ目的は人を殺すことを学ぶのではなく、人や社会を生かしながらお互いが理解しあう内容を学ぶべきなのだ。(田島)

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