カマボコの秘密

1980年の国際児童年を記念して、アジア・太平洋地域の15カ国から児童書の代表的なイラストレーターを東京に招聘して、ユネスコ(ACCU)でセミナーを開催したことがあった。いずれの参加者も個性は強く、実に楽しい方ばかりだった。英語のコミュニケーションはみんなうまくはなかったが、絵を通じての豊かなコミュニケーションは、実に愉快で有意義なセミナーであった。 初日のこと。数カ国の参加者と連れ立って昼食に一緒に行った時、人民服を着た中国から参加したT氏は国民的に著名な漫画家でもあるが、テーブルの上に並んだ食べ物を興味深そうに見つめながら「ちょっとお聞きします。日本の食べ物の中に、小さな板きれの上に乗っているおいしい食べ物があるそうですが、いったい何でしょうか?」と尋ねてきた。「小さな板切れに載った美味しい食べ物?」私は一瞬とまどったが、板の上に載っている日本の食べ物?というのは「おそらくカマボコだろう」と思って、「ひょっとしてカマボコ?」と答えると、彼は破顔一笑、「そうです。そうです。カマボコです。思い出しました。」といかにもうれしそうに大声で答えた。そこで昼食後、私は早速近所のお惣菜屋さんを紹介した。彼はカマボコを何本も買った。 3週間のイラストレーターのセミナーも終わって、帰国準備をしている氏を見送りにホテルに訪れると、氏は熱っぽい目つきでじっと私を見つめたあと、通の手紙を差し出した。私は驚いた。「お礼を言うのなら、口で言えばいいのに・・・どうして手紙をくれるのか?」とも思いながら…

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子どもを生かす言葉、人間を生かす言葉、先生のひとこと

   子どもはたった一言で、立ち上がれないほど深く傷つくことがあります。それは大人も同様ですが、特に子どもの場合は、人生経験が少ないだけに言葉による損傷は大変甚大なのです。現代の子どもは、いかにも平気な顔のように見えますが、実は満身創痍、体には、無数の言葉の矢が突き刺さっていることがあります。大人からの信じられないような言葉、無慈悲な友人の言葉、がっかりさせる両親の言葉など、これまでに体験したことのないショックの言葉など、全身にまるで鉄砲の弾や矢のように、言葉が深くつき刺さっているのです。しかしこうやって人は成長していくのですが・・慣れという体験を余り持たなかったときには大変です。  周りから「死んでしまえ」と言われても 約80%の子どもは心の隅で笑い飛ばして自己防衛ができるのですが、約20%の子どもは自己防衛ができずに時と状況の中で「本当に死ぬ」ような局面に陥るのではないかと思います。子どもにとって、死は決して遠くにあるのではないようです。とくに子どもは、自分がどのように他人に見られているか、どのように他人に表現されているかを非常に気にしている存在で、それだけに自分の欠点や問題点を友だちに言いふらされたり、ネットに誹謗中傷を書き込まれ勝手に流布されたり、肉体的精神的に侮辱されたときには、子どもの思考や精神はだれであっても崩壊の危機に直面するのです。 特に子どもの場合、敏感な感覚が異常に損傷して、生涯にわたって心の深層に深い痛みを形成していくのです。人間はいつも自分のことを考えて…

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