キラン図書館ー巨大な格差の中で苦しむパキスタンの刑務所の中の子どもたち

アジア・太平洋地域で識字教育や基礎教育の仕事に携わってきて痛感したことーそれは社会の中で最も抑圧され、最も困難な状況の中で生きざるを得ない子どもたちであった。すべての人にとっては戦争状態のない平和が一番重要だし、生存のためには衣食住のような物理的環境がよく整備されていることは人間の最も重要な用件であるのは間違いないが、識字教育を行っているうちに、人間という存在は、物的なことだけではなく、精神や心の自由があってこそ幸福に存在するように思えた。 こうした精神や心の自由などが存在しないといかに物的な環境が豊富にあっても人間は幸せを感じないし、生の充足感を得ることができない。この人間の豊かな精神活動を支える根拠には ―豊かな言葉があり、人を動かす文字があり、人間性を高める表現活動のすべてがありーそこに識字の課題がすべて存在しているように思えた。特に変化の激しい21世紀には、識字の力を持っていなかったら生きていけない。 1998年の暮れ、私はパキスタン政府の女性開発省の青少年福祉を担当している職員から、刑務所に収容されている子どものための識字教育活動への協力要請を受けた。私は、パキスタンの刑務所に収容された子どもたちの実情についてよく知らなかったので、まず職員にパキスタン全土で収容されている子どもの数字や実情を記した資料を要請した。しかし、いつまでたっても福祉省のスタッフから報告書や数字らしい数字が示されない。そこで私は職員に厳しく質問した。 「なぜ、詳しい数字を教えてくれないのですか…

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