刑務所の中に設置されたキラン子ども図書館(パキスタン)

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       2007年に建設が完了したペシャワールのキラン図書館の建物
http://www.asiawave.co.jp/aw_pdf/asiawave2007_09demo2.pdf#search=

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ミャンマーのヤンゴンに設置されたキラン図書館の看板(ビルマ語でヤウンチ図書館)

人はどこでだれに会うかわからない。どこで誰が聞き耳をたてているかわからない。しかしその場その場で必要と思われることをしゃべるのではなく、私はいつも本音で語ることが必要だと思っている。本音は人との新しい出会いを作るからだ。あるとき私は、パキスタンのイスラマバードで識字教育に関するNGO会議で発言を求められたとき、「もちろん、このようなワークショップや会議開催も必要ですがね、豪華なホテルではいつもこのような会議が開かれおり、だれもかれもが口角沫を飛ばしてしゃべっています。カラフルな事業報告書はどのオフィースにもうず高く積んでありますが、果たして現実を改善しているのでしょうか?政府を筆頭に口や言葉ではなく実際の行動こそが必要なのです。皆さん!会議で決めたことは確実に実行して下さい。今は発言を止めて実行する時です。実行!」と私は叫んでしまった。会議を主催した担当者は、眉をひそめたが、会議が終了すると何人かが近づいてきた。その中には社会福祉省の女性がいた。彼女は、「あなたの本音の発言にとても感動しました。そうです。言葉ではなく実行が必要なのです。会議ばかりが開かれて、現実は少しも改善されていません。実はパキスタンの刑務所に収容されているたくさんの子どもたちが今、大変な状況に置かれています。是非私たちの仕事に協力して下さい」と言った。そのため彼女の依頼で、パキスタンの刑務所に収容されている子どもたちのための協力活動を始めことになった。私は刑務所に収容された子どもたちの実情は全く知らなかったので、まず全パキスタンで収容されている子どもの実情を記した資料を要請した。しかし、いつまでたっても彼女から報告書や数字らしい数字が示されない。
 「なぜ、いろいろの数字が示されないのですか。客観的な実情を知っておかないと、つまり子どもたちが何ヶ所の刑務所にどのくらいの数で収容されており、どのような心理状態におかれているか知らないと何もできないのはおわかりでしょう?それともあなたは、上司から外国人にはそのような詳しい実情を話すなと口止めされているのでは?」と問いかけると、最初は強く否定していたが、やがて「はい」と素直にうなずいた。そして全国の80箇所の刑務所に約7千人の子どもたちが収容されているのを知った。私はどの国でも、刑務所に収容された子どもたちの問題に取り組むのは実に困難なことは知っている。それぞれの国の社会的恥部でもあり、国際的な人権問題に広がることも極力恐れているからだ。しかし「協力が必要でしたら私に怪我をした患部を見せて下さい。頭に怪我をしているのに足に包帯を巻いてもなんにもなりませんからね。」と言って刑務所の実態調査をすることを強く要請した。

 こうして私は1998年に初めてアデアラ刑務所に足を踏み入れた、そこには約四千人の大人と約二百名の子どもたち(十歳から十八歳)が収容されている大きな監房があった。看守がいかにも威厳をもって警棒を振り回している。聞き取り調査の結果、貧困や無知のために犯罪者に仕立てられた無実の子どもたちや大人の犯罪に利用された多数の子どもたちの話を聞いた。窃盗、麻薬運び、殺人、浮浪罪などあらゆる罪名がつけられていた。家庭の貧しさからくる無数の小さなジャンバルジャンの目を牢獄に見た。
調査のとき、「お願いです。僕が捕まっていることを家族に知らせて下さい!僕は誰も殺していない。」と訴えた子どもがいた。これは犯罪を犯した大人が無知な貧しい子どもを犯罪者に仕立てたケースだった。すぐに弁護士に連絡した。
リーガル・リテラシーという言葉がある。法的な必要な識字による知識を意味しているが、情報化社会と言われながらも、自由に人生を選択できる子どもたちは、世界でも非常に限られている。こうした状況は、パキスタンに限らず世界的な傾向であるが、近年はますます弱年の子どもに武器を渡し戦争の担い手にしたり、犯罪者に仕立てられる子どもの数が激増している。知識や想像は、彼らの精神的な大きな癒しになり拠り所になり、自立の力となるはずだ。私は苦しんだ。なんとかして家庭や社会や知識から遮断された子どもたちを救いたい!知識や本を読む喜びは富裕な人々だけのものではない。こうした調査をもとにして、私はこの刑務所での最初の仕事を狭い劣悪な監獄に収容されている子どもに、クリケットやバドミントンなどスポーツ用具を贈呈することであった。成長盛りのかれらを太陽の下でスポーツさせることが彼らの健康を確保する道につながる。刑務所長はこの申し出を承諾した。性急に人権問題として取り上げると、関係者はすぐに実態を遮断するために少しづつ彼らの考えを変えていった。そして次に子どもたちの将来の自立のために「新聞紙を再生する紙漉きのワークショップ」を開いた。色とりどりの紙が新聞紙を材料にして漉きあがっていくのを見て、子どもたちは狂喜した。物をつくるということに興奮した。こうした具体的な行動の中から、刑務所側との信頼関係が醸成されてきたとき、本や情報から隔離されている子どもたちの「本が読みたい!新聞が読みたい。」という要望を実現するために、私は監獄内に南アジアでは初めての子ども図書館を設置する活動を開始した。

 この図書館が出来上がるまで実にいろいろの障害があったが、常に粘り強い説得で刑務所や世論を変えていったのが成功の原因だった。そして調査から2年たった2000年の11月、パキスタンや日本のNGOの友人など約30名からのご協力でラワ-ルピンデイ中央刑務所に収容されている子どもたち(十歳~十八歳)を対象とした子ども図書館が完成した。建物の全経費は50万円。絵本や物語など1500冊以上が個人や出版社から届けられた。大きな子どもが本を読んでいる絵看板も掲げられた。
 この図書館はウルドー語で「太陽の光」を意味するキランという言葉をとって「キラン図書館」と命名された。太陽の光のようにすべての子どもたちに明るい光が等しく行き渡るようにという願いからである。図書館の建物は六メートル四方だから大きいものではない。しかし建物をチェックしているとき、狭い牢獄から図書館の建物をじっと見つめている大勢の子どもたちの熱い視線を感じた。かれらは必死に助けを求めている。知識は光になるのだと思った。そのため彼らからも図書館の内容についてアンケートを集めた。幸い子どもたちの半数は読み書きができたので、読めない子どもは読める子どもの読書を見て刺激を受けることになった。また図書館を運営するボランティアによる識字クラスの開設も計画し、無罪の子どもたちを救うために弁護士を交えた救援会も組織された。子どもの牢獄はパキスタン社会の深刻な矛盾がそのまま反映されている。貧しいが故に犯罪を犯したり、無知な故に投獄されたり、家族から見放されていく子どもたちに、文字や絵や写真や職業訓練を通じて励ましていこうとする試みは、小さくてもこの社会に大きなインパクトを与え始めた。



 そして2006年の現在、この試みはパキスタンで全国に広がっていった。2007年現在、パキスタンには計5館の子どもたちのキラン図書館が設置されている。4館は刑務所の中に、1館は少数民族の子どもたちが対象である。最初の第1館であるアデアラ(ラワールピンディ)は、パキスタンや日本の関係者、NPO2001、東京子ども図書館の松岡享子氏、ウルドゥー語の東外大名誉教授の鈴木先生など約30名の方々の寄付によって初めて設置が可能となったもの。また第2館のムルタンキラン図書館は、日本・パキスタン協会の「美穂子基金」の協力で設置されたもの。2002年に96歳で亡くなられた西山美穂子さんの寄付によるものです。美穂子さんは、夫である元日本・パキスタン協会専務理事西山三千樹さんがマングラダムやタルベラダムを作るエンジニアとして共に過ごされ、パキスタンを第二の故郷としてこよなく愛されたそうである。そしてパキスタンの女性や子どもの幸せのために役に立ちたいと、日本・パキスタン協会に寄付を申し出られ、高安事務局長や小西さんなどの協力を得ながら設置が可能になっているものである。
第3館のファイサルバードのキラン図書館は、東京外国語大学の名誉教授であった鈴木先生の遺贈金により、子どもたちが最も多数収容されているファイサルバード刑務所内に図書館が設置されたもので、鈴木先生の遺志は、さらに第4館のカラーシャのルンブル谷に住む少数民族の子どもたちの図書館(これはわだ晶子さんの意志によって設置されたもので、ルンブル谷に住む子どもたちが幅広く利用している。http://kalasha.fc2web.com/tayoriFrame.htmlや第5館として建設が始まったぺシャワールのキラン図書館設置も可能になった。
ICLC事務局は、毎年現地を訪れて、関係者と協議を続けながら、子どもたちへの図書館活動を広げている。



そして軍事政権下のミャンマーでは、ミャンマー作家・ジャーナリスト協会の協力を得て、ヤンゴンほかで3館が設置された。いずれにしても、この努力とはこの時代の大きな流れと変化のなかで、知識や情報や技術などの基本的な識字の力を社会の最も苦しい状況のなかで生きている子どもたちに伝えていこうとすることを意味している・・・こうした社会から阻害された子どもたちを知的なレベルから救うことは本当に必要なことだと思っている。この努力はたとえわずかでも、彼らに生きるための元気さを暖かく送ろうとするもので、「この社会はあなたたちを決して見捨ててはいないよ。いつもしっかり見守っているからね。元気を出すんだよ。」という証しになるのではないかと思う。子どもの犯罪ーそれは大人の犯罪の裏返しである。中には冤罪の子どもも少なくない。大人に利用され、犯罪者と仕立てられているのだ。そうした子どもたちだけに、かれらははわずかの精神的な励みによって、いくらでも蘇生し、いくらでも元気を取り戻す出す存在だからである。最も敏感な感覚で絶体絶命の環境の中で生きている子どもの存在は知的な救い手を必死に願っている。図書館ーそして知識、情報・・・・言葉、ことば・・・・・これは人の生き方を励ます生命の水のようなものだ。

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第1館目のキラン図書館の内部の様子、現在はコンピューター教室も開かれている。たくさんのポスターも貼られている。定期的に絵本や本、雑誌などが現地のいCLCの支部から届けられている。
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第1館目のキラン図書館の建物

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この記事へのコメント

  • Timothtiz

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    2017年06月13日 10:20
  • Thomanut

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    2017年07月01日 01:15

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